夢中になって読んじゃいました。
安孫子武丸さん、私にとってゲームの”かまいたちの夜”です。熱中してプレイしましたが、結末には納得できなかったような覚えがある。
今回の”狼と兎のゲーム”も同じような感じでした。
狼と兎のゲームのネタバレです
狼と兎のゲーム
智樹は友人である心澄望(コスモ)を疎ましく思うことが多かった。
野獣のようなおやじの怒りに触れるようなことをした心澄望(コスモ)。智樹はいやいやながら心澄望に連れられて家に戻るのに付き合う、、、、
後味が悪いというかまとめる気がないというか
冒頭に書いた通り夢中になって読んだんですよ。電子書籍で読んだから、職場からちょっと抜け出てスマホで続きを読んだりしたほどです。こんなことしたのはZガンダム以来です。当時は小説をズボンのポケットに入れてたけどね。
茂雄が智樹の家を訪れた時や新宿で智樹たちと茂雄がニアミスしたときはドキドキでした。
けどね、最後はあっさりしたもんでした。成美は心澄望の家の住所って知ってたっけ?関係者が誰一人救われていない。クライマックスらしきものがあるけど、それまでの逃走劇に比べれば薄いもんですよ。
逃走劇は楽しませてもらいましたし、ドキドキしました。(ワクワクと言っちゃいけないかもしれないけど)。読み返そうとした部分はクライマックスではなく、逃走劇内のいくつかのシーンでした。話の中盤を楽しむと考えられれば良い作品ですが、結末が救いがなかったなぁ。
茂雄の恐怖
省略の仕方がものすごくうまいんですよ。特に女性に乱暴するシーン。最初に母ちゃんに乱暴する声を幼い智樹を通して聞かせて、甲斐亜(ガイア)を殺したと刷り込ませてある。さらに智樹のママを女として品定めしているから、杏奈に対して何をしたかわかるんですよ。というか詳細に書かれるよりも頭の中で妄想が膨らむんですよ。
犯罪者ならではの自分勝手な理屈も怖いし、警察へ届けようとする智樹ママを鷹揚にとめるところも怖かった。
倫理観のない警官として、私の中で直結しました。
智樹と心澄望(コスモ)の一方通行な友情
心澄望にとって智樹は心の友であり、通じ合った仲ですが、智樹にとってはそうではありませんでした。智樹君、気持ちはわかるがなぁ、、、、と思いながら読んでました。
こっちの伏線はうまくいかなかったかなぁ。クライマックスで「親友です!」といった時のカタルシスは感じなかったし。心澄望が自分の首を切ったのとあまりつながらなかったんだよねぇ。
がっつり守られた智樹家
心澄望家ががったがたで成美、アンナ、浮浪者がえらい目に合う中で、無事に生還したのが智樹家です。家への侵入もされませんでした。
智樹家って読者にとって登場人物や登場する場所の中で、一番自分に直結する場所です。
子供のアイドルことアンナ先生
読者にあんなにきっちりと理想の若い美人な先生を頭の中に作らせておいて、、、、、。
私の中では「アンナ」でした。シーツの中でうずくまっているのを「杏奈」って書かれてて(これも直接的な描写はない)、”杏奈?杏奈って誰だっけ、、、、アンナ?”とわかった時、え?って声が出ました。
智樹たちがやっとアンナ先生が頼ることに決めた時の読者の絶望感ね。子供たちは明るい兆しができたのに、それを超える絶望感。子供たちが訪れた時の格好が、世の中には善意しかないと信じて茂雄を部屋に入れた時とまるっきり服装が違う。
茂雄がアンナ先生を恐怖で縛りました。心澄望たちが来たことを伝えようと伝えまいと殴られ犯されます。理由が違うだけです。でも恐怖で縛られているから茂雄に伝えてしまう。
アンナ先生は救われなかったね。警察を向かわせたのがアンナ先生のほうが私はよかったんですが、個人の通報じゃ動かないかな?(智樹たちはそれに悩まされてたわけし)
茂雄の罪がアンナ先生のことまでたどり着いてません。アンナ先生に起こったことはほったらかし。だからこそ私は「話の中盤を楽しむと考えられれば良い作品」と思いました。