フレデリカ LOVE 邦画<ネタバレ>

内容を知っている方だけどうぞ。ネタバレで感想や評価を書いています。たまに批評・解説になっちゃっているところもあり。

映画『ピンクとグレー』感想/評価点:90/ごっちとりばちゃんの違い

f:id:frederica2014:20170108155755p:plainオレ様アカデミー賞2016大賞を受賞

f:id:frederica2014:20170108155755p:plainオレ様アカデミー賞2016 青春部門を受賞

スタッフロールに映画の余韻を全部もっていかれそうになった

映画の余韻に浸りながらスタッフロールを見ていたのですが、その余韻が吹き飛びかねない文字が出てきました。場内がざわつきました。

「市川文化会館」

私が見ていた映画館から徒歩十分の場所にある市川文化会館。ダンスの練習でもちょいちょい使っていた市川文化会館。ごっちのお姉ちゃんのコンテンポラリーダンスの劇場ってあそこなの!?

映画の舞台の一つが自分の生活範囲だっただけで、こんなに驚くとは思いませんでした。

www.tekona.net

 

2016年が始まったばっかりなので二日間のうちに今年のワースト候補とベスト候補を見ることになるとは思いませんでした。

 

さて、ピンクとグレーのネタバレ感想。原作未読です。

※主人公の二人の名前がひらがなで、読み返したら文章の中で埋もれてしまい、わかんなくなってしまったので「ごっち」と「りばちゃん」と括弧をつけています

ジャニーズのタレントさんが書いた小説

 埼玉の団地に引っ越してきた「りばちゃん」は「ごっち」に出会う。親友になった二人は一緒に東京に出て一緒にすみ、同じ夢を目指す。「ごっち」は頭角を現し始め、「りばちゃん」は「ごっち」を見て自分も登っているように思い込む。しかし、現実は二人の立場の差を露骨に表し始め、、、、、

原作小説を書いた加藤シゲアキさんはジャニーズのタレントさんだそうです。

 

前半  ちょっとした洞察力。

前半は作者の加藤さんが芸能界活動を振り返ってみて感じた売れていった人たちと自分(失礼!)の差を振り幅広く描いたんじゃないかなと思います。「りばちゃん」が自分と「ごっち」との差に気づかないのが見てて心が痛かった。 「ごっち」がイケメンって話ではなく、同じ物を見ているのに感じ方が「ごっち」の方が鋭い。鈍い「りばちゃん」は鈍いゆえに「ごっち」の成功を自分の成功として捕らえてしまう。(自分のことのように、ではなく)

「ごっち」は天才とかイケメンではありません。ただ、「りばちゃん」と比べると洞察力や空気を読む力がありました。それが二人の今後を大きく分けてしまいました。

 

私は「りばちゃん」です。今まで「ごっち」がたくさんいました。

中学のときに昼休みにマラソン自主練習をしているときに、ペースを上げた親友を見て、「はしゃいで無茶しやがって、そのうち戻ってくるだろう」と思っていたら、戻ることはなく練習時間が終りました。

このブログ自体もそうだったりします。同じ映画レビューをしているのに、他のブログの方が検索の上位になる。自分の方がしっかり書けていると思うときもあります。でも現状は「ごっち」を見ても、自分との違いが分からない「りばちゃん」だったりします。

私の人生で例を挙げればきりがありませんが、私は「りばちゃん」の道化っぷりが胸に刺さって刺さって仕方ありませんでした。

「りばちゃん」が「ごっち」になるのは難しいんだよなぁ。まじめにやれ!って話じゃないんだもん。

 「りばちゃん」はサボっているわけじゃないんですよ。斜に構えて”マジになるのは、かっこ悪い”とか考えているわけじゃないんですよ。ただ、「ごっち」が気づけることが「りばちゃん」には気づけない。

「りばちゃん」が「ごっち」との差を埋める方法の一つは”数多くの経験”かなぁ、、、。”あの時こうすりゃ良かった”を積み重ねて同じようなことが起きたときに俊敏に対応できるようになることかもしんない。

思い出した伊集院光さんのラジオの投稿。友達が「ごっち」で投稿者が「りばちゃん」。エロ注意です。

 

後半 「りばちゃん」が「ごっち」になったら

「りばちゃん」側はいつも思います。”差がついちゃったけど「ごっち」と同じ立場になれば俺だってやれる!!”。それが後半です。これがまた胸にどんどん刺さっていく。

「ごっち」なら回避できるはずの悪意の直撃を受け(「ごっち」は秘密の店に入っていないと思う!)「りばちゃん」はぐちゃぐちゃになっていきます。

事務所の社長が”「ごっち」は努力していた”と言っていました。言いたいことは分かりましたが、努力という言葉が正しいかは微妙でしたね。「りばちゃん」が努力をしていなかったのは確かでしょうが。

前半が”過去の反省”なら、後半は”運よくうまくいったところで”のシミュレーションです。

うーん、このまま行くと「りばちゃん」側は何やっても成功しないって結論になっちゃうなぁ、、、、。「りばちゃん」は上り方を間違えただけで、着実に一歩一歩上がっていけば「りばちゃん」側も何かになれる!って結論にしたい。

 

見事だったのはパーティから帰ってきたときにサリーをなじる「りばちゃん」ですね。あのなじり方は確かに「ごっち」じゃなく「りばちゃん」だと感じて、意識の変更ができました。

 

 ごっちのお姉ちゃんはなぜ死んだのか「やれることをやる」

胡蝶蘭の花が落ちる時には、花がしおれずに、先端に咲いている花の方の、茎から花ごと落ちるので、きれいな状態です。

コンテンポラリーダンス胡蝶蘭を表現し、その舞台を完成させるために飛び降りた鈴木唯。

おじいさんがそうだったように(おじいさんが姉弟と同じような形で亡くなっているとお母さんが語っています)芸術の”高み”で死ぬ。もしくは芸術を完成させるために命も厭わない。そんな感情があるのかもしれません。

お姉ちゃんが好きだった「ごっち」もその感覚を有していました。

サリーが見上げた風船を、「ごっち」は見下ろします。死ぬと決めた日は高みまで来たと感じた日でした。

 

「ごっち」が「りばちゃん」に見てたもの

「ごっち」は俳優として売れ始めたころに「りばちゃん」に”お前の方がオレよりすごい”といいます。「りばちゃん」は慰めにしか感じられませんでしたが、「ごっち」は本心だったかもしれません。

姉の葬儀の中で、文化祭のステージのことを配慮してくれる普通の感覚の「りばちゃん」と、それにやると即決できてしまう自分。あのときに、遺書の提示のしかたまで決まっていたかもしれません。
「ごっち」は”高み”と”生”を天秤にかけたら”高み”を選びます。好きだった姉と同じく”高み”です。
「りばちゃん」は普通に”生”を選びます。ラストでもそうであったように「りばちゃん」は死にません。その普通の感覚の人にそばにいてほしかったんじゃないかな。
うーん、うまく表現できないな、、、、。

この辺を顕在化して文章にするのは難しく、かつ、無粋かもしれないですね。

追記:ちょっと上の文章ひっこめます。うまく表現できない腕のなさを嘆くならともかく、無粋とか言い出したらこのブログを否定していることになりますね(笑)

 

行定勲監督の手腕

wikipediaを見ると、登場人物が明らかに少ないです。幼馴染は「ごっち」、「りばちゃん」、サリーの三人ではなく、四人だったようです。

「ごっち」のお姉ちゃんは舞台で飛び降りた後、生存して病院に運ばれます。ですが、数年後に自ら人工呼吸器の管を切って亡くなるそうです。

その他、たくさんのキャラクターが登場していますが、うまく整理されているなぁ。

色々足りなかったんだろうなと思われる映画を見た翌日だったので、とても感心してしまいました。

 映画の広告の仕方として「62分後の衝撃」としてますが、この映画のメインはそこじゃないですね。

映画の広告「最後の五分全てが覆る」が本当にすべてだった映画。

 

 

夏帆さん

前半と後半でまるっきり違う役を演じた夏帆さん。後半で思い切った濡れ場を演じていました。

ですが、私としては色っぽく感じたシーンは別です。

おっぱいが出てきたシーン?いやいやアレは「りばちゃん」の動けなさと受け入れの早さに「ごっち」じゃこうならないだろうなと差を感じてました。

色っぽく感じたのは、前半の「りばちゃん」に押し倒された時の右足です。きれいで色っぽい右足でした。

 菅田将暉さんも前半後半での変わりようは見事でした。試写会場を出た後に近寄ってきた夏帆さんを無造作に壁にぶつけた様子は衝撃でした。

 

ピンクとグレーのみんなの評価

私は大好きな映画の一つになりそうなのに★的にはいまいち。

ジャニーズ主演で中高生と一緒に見に行った人たち(←中高生本人ではない)がR指定にしないとだめだろうって評が多い。中高生じゃ分からないよね。前半の「りばちゃん」の勘違いは笑うポイントでしかないよね。中高生が「りばちゃん」を見て自分を鑑みれるなら、その人は「ごっち」側の人、もしくはもうちょっとで「ごっち」側になれる人だから、自分と洞察力の鋭い親友のことの違いを考えてほしいな。

後は原作とまるきり違うって人も。

62分後の衝撃にも賛否。映画の広告の仕方的に「62分後の衝撃」と銘打っているから注目しちゃうけど、この映画の狙いはそこじゃないと思う。

 


映画『ピンクとグレー』予告編

 

 

TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル


宇多丸が映画『ピンクとグレー』を語る

 

追記:DVDが発売されるので思い出してみました。

クライマックスやオチではなく、構成が面白く感じたという珍しい映画でした。

「りばちゃん」側はいつも思います。”差がついちゃったけど「ごっち」と同じ立場になれば俺だってやれる!!”。それが後半です。これがまた胸にどんどん刺さっていく。

これがわからない人はつまらないし、人生の勝ち組か人生経験が足りないかどちらかです。

クライマックスは話をまとめただけなので、どうでもよかったです。