「水曜日が消えた」を見てきました。ノベライズはありますが、原作はありません。すげーな、よく練ったなぁ。
水曜日が消えた
作品情報と鑑賞前感想
- キャスト:中村倫也さん 石橋菜津美さん 中島歩さん 休日課長さん 深川麻衣さん きたろうさん
- 監督:吉野耕平さん
- 脚本:吉野耕平さん
- 公開日:2020.06.19
- ジャンル:人生・日常
- 上演時間:104分
- レーティング: G
あらすじ&鑑賞前感想
幼い頃の交通事故をきっかけに、ひとつの身体の中で曜日ごとに入れ替わる“7人の僕”。性格も個性も異なる7人は、不便ではあるが、平穏に暮らしていた。各曜日の名前で呼び合う彼らの中でも、“火曜日”は一番地味で退屈な存在。家の掃除、荷物の受け取り、通院、、、他の曜日に何かと押し付けられて、いつも損な役回り。今日も“火曜日”はいつも通り単調な一日を終えると、また一週間後に備えて、ベッドに入る。それは突然やってきた。“火曜日”が朝目を覚ますと、周囲の様子がいつもと違うことに気付く。見慣れないTV番組、初めて聞く緑道の音楽…そう、“水曜日”が消えたのだ。
監督は吉野耕平さん。うちとしては初めましてですね。というか長編映画の監督は初めてだそうです。
テレビ会社制作作品だし気を抜いて見に行こう。
ここから先は 水曜日が消えた の感想です。ネタバレしてます!!
水曜日が消えた - ネタバレ感想 ( 88 / 100 )
キャラクターと俳優
7人の“僕” - 中村倫也さん
映画始まる前に仲村倫也さんから挨拶がありました。「楽しんでね」とか「コロナに負けずに頑張ろう」ではなく「撮影したのは2019年5月頃だからコロナの3密は関係ないよ」の方が主題だったんじゃないかな。
なお、最初に中村倫也さんを見た瞬間に私が思ったこと。「あ、バナナムーンゴールドの上リスナーだ」(深夜ラジオでのネタです。深夜ラジオのネタは番組外に持ち出しちゃいけないという不文律がありますが、それを破ってすみません)
本編について。後述しますが、基本的には”火曜日”だけで話は展開されます。俳優ヒューチャー映画なら7変化を楽しむ映画になるんでしょうね。「中村倫也くん、かっこいい!かわいい!」と騒ぐような。女子が「眼福!!それだけでいい!」となるような。
そっちの中村倫也さんの7変化の方が収益は出るでしょう。
なのに”火曜日”だけしか出てこない。
もうこれだけで描きたいことを真摯に描いていると感じました。
一ノ瀬 - 石橋菜津美さん
後述しますが、彼女が中村倫也さんを気にかけていたのは恋愛ではなく悔恨からです。
新木 - 中島歩さん
話の裏回し?きたろうさんの人情っぷりを深堀するための人。
高橋 - 休日課長さん
ゲスの極み乙女の人。
https://twitter.com/eninaranaiotoko
出オチお笑い部分を担当と思いきや、「月曜日」の世界の豊かさを示した人。
瑞野 - 深川麻衣さん
<乃木オタモード on!!>
まいまいだー!!
エンドロールでは、シメのきたろうさんの前に出てきたよ!頑張ってるよ!!
乃木坂46合同会社が卒業後のメンバーのマネージメントを行うことを早く決めていれば、まいまいも残ったろうになあ。
<乃木オタモード off>
司書さん。何か裏があるのかなと思ったんですが、普通の人でした。
他の曜日にも世界があるという象徴でした。
医師 - きたろうさん
シティーボーイズ(きたろうさん、大竹まことさん、斉木しげるさん)の方々って法に縛られない人情派の役どころのこと多いよね。
ノベライズ本
物語の感想
”火曜日”だけで話を進めるのは見事でした。
普通ならそばにいる一ノ瀬目線で各曜日の違いに思い悩むんじゃないかな。
以下、主人公を中村倫也さんと呼びます。良作は俳優名で語りたくないんですが、名前付いてないんだもん。
内側から見る多重人格。7人のままか統一か
伝説の名作「ジキル博士とハイド氏」の昔からそうだったように、多重人格モノは「多重人格者を見る普通の人」目線でしたが、本作は多重人格の一人の目線から。
新しい目線なので導入部分の設定説明が飽きませんでしたね。楽しく設定を飲み込めました。
他の曜日の様子が見れないのがすごく良かった。動画でも見れないところがよかった。動画でも見れないおかげで月曜日が迫ってくる2択にフラットな気持ちで臨めました。
価値観をグラングラン揺さぶられました。
"火曜日"が"月曜日"に迫られた選択。普通に考える結論を悪役の"月曜日"が言ってくるのがずるい。
普通に考えれば"火曜日"の方が異端な意見なのがずるい。おかげで映画を見ながらずいぶん考えこみました。
これって、"水曜日"が司書さんと出会って心を交わしたシーンをちゃんと描かれていたら、"火曜日"の考え方にバイアスがかかりすぎてて考え込むことはなかったろうな。絶秒なバランスでした。
月曜日の心変わり
"火曜日"との戦いに勝った"月曜日"。
"火曜日"(&視聴者)が感じていたほどの自分勝手な悪党感はなく、ちゃんと話を聞く人でした。自分でもある"火曜日"とケンカしたのをトリガーにして、医師(きたろうさん)の話を聞き、一ノ瀬の思いが"火曜日"にあることを知って、他の曜日の人格にも世界があることを知りました。"火曜日"が、”水曜日”の世界の人である司書さんとデートした時と同じように。
そしてエンディング前に全ての曜日の世界を見せて、すっきりさせるのは痒い所に手が届き、後味の悪さを残さないのはテレビ会社制作テイスト。当たり前ですが"月曜日"の選択を肯定する構成になっています。
この物語が原作なしとはすごいな
統一か2択かの選択肢のバランスをフラットに持っていくバランスがすごいなと。
普通は上記にも書いてきましたが、製作者の思いを入れすぎて「世間や私自身の考え方は置いといて、こっちを選ぶのが正義って流れだね」という察しながら見れるんですけどね。”水曜日”とかの世界を生き生きと描くとか。
このバランスって完結している原作を見てさらにブラッシュアップしてたどり着けるものだと思うんですけどね。ブラッシュアップなしで私の心をグラングランさせるとは。
事故原因。一ノ瀬は防犯ブザーに気づいているのか
さて細かい話。本筋や描きたいことではないので、ちゃんとは描かれてません。描きたい舞台にたどり着くまでの背景や物語の裏読みをしたい人向け。
大まかにいうと事故の経緯はこんな感じです
- 中村倫也さんちが引っ越しする前日、一ノ瀬に思い出が欲しいという。一ノ瀬はランドセルにつけていた猫の防犯ブザーをあげる
- 引っ越しの車の中で好きな子からもらったアイテムを触っていたら防犯ブザーがなる
- 運転中のお父さんがびっくりしてハンドル操作を誤って事故。
- 十数年後、事故の原因が自分であり、両親が亡くなった原因が自分だったことに気づく。医師(きたろうさん)に吐露。苦しむ。
- 二年半前に7人に分裂。主人格がいなくなる。
ここまではほぼ確定でしょう。
こっから先は数年に渡って邦画ばっかり見てきた私の妄想。
6.一ノ瀬は記事を見ていて、中村倫也さんの事故に気付く。事故の記事を見ているときに「後部座席のいた息子の防犯ブザーが....」みたいな記事を見て、自分が渡した防犯ブザーだと気づく。自分が渡したものが中村倫也さんの苦しみを作ってしまったので、懺悔のつもりで世話を焼く。
ここから映画スタート。
7.んでクライマックス。一ノ瀬が中村倫也さんちに出入りする理由は自分の懺悔だったといっても中村倫也さんの心を潰すだけなので、愛だと「嘘」をつく。(家に出入りしている中で愛が生まれたのも本当なんでしょうが)
8.”月曜日”は一ノ瀬の「嘘」を嘘と気づきつつ、一ノ瀬が抱える事故への悔恨(「防犯ブザーを渡していなければ....」)を「お前のせいじゃない」といって一ノ瀬を開放しようとする。
というところかな。
物語と関係ない話。主人格のいない多重人格はあり得るのか。中で連携が取れないことはありうるのか
本作は主人格が消滅しています。ひょっとしたら”月曜日”か”火曜日”が主人格かもしれないけど、”火曜日”は分裂する前に書いた似顔絵さえも忘れてたからなぁ。(似顔絵にあった日付が2007年で、冒頭で”火曜日”は医師に2年半の付き合いと言っている)
物語で多重人格を扱うときは必ず主人格がいます。じゃないと話をどうやって占めていいか分からない。あほな私の頭からぱっと出てくる作品って「ジキルとハイド」「幽遊白書の仙水」「ハンターハンターのアルカ」ぐらいなもんですが。
ビリー・ミリガンは、主人格がいて、それを守るために多重人格になった。ついでに中で連携が取れていて、誰が表に出るかはみんなで決めているらしい。(読んだのは20年近く前なのによく覚えているなぁ)
ま、これまでの創作物にないから主人格がない多重人格なんてありえない!はバカすぎるので、ビリー・ミリガンの話だけにします。多重人格になる理由は「主人格の心が壊れるのを防ぐため」。だから主人格は必須に見える。多重人格の役目を考えると本作のように主人格が消失することってありえるのかなぁ。
人間は心も脳も複雑なので主人格がなくなってしまう事案もあるかもしれないけどね。
そういえば、最近見た多重人格の話も主人格を守るための多重人格でした。
www.frederica-movie-review.com
本作で主人格が消失する理由は、主人格に統一するという一種の正しい選択を排除し、統一とこのままの二択を視聴者に迫りたいから。なので実際に存在する事象かなんてどうでもいいんだけどね。
水曜日が消えた のベストシーン
映画のキモ
”火曜日”と”月曜日”のバトルのバランス
人間は1体に1心という当たり前のことを言う悪役の"月曜日"と他の曜日の世界を守りたいという”火曜日”。なかなかドキドキできました。
冗談
"月曜日"がベットに呼び込むもの
休日課長さんの時は.....ネコ....だったよね?どっちでもいやだけど。
きれい・かわいい・色っぽい
告る深川麻衣さん
そこまでが司書エプロン姿だったのにドレスアップしてたまいまいがかわいかったです。
タグと評判
タイトル:-水曜日が消えた-
監督:-吉野耕平さん-
脚本:-吉野耕平さん-
俳優:-中村倫也さん- -石橋菜津美さん- -中島歩さん- -休日課長さん- -深川麻衣さん- -きたろうさん-
水曜日が消えた の評判
3.66/5.0 (yahoo映画 2020/07/01)
その他
最近の世の中
私のこと
記事をアップした時のタイトルは「一ノ瀬(石橋菜津美さん)は防犯ブザーに気づいているのか」。この映画の本題はそこじゃないのはわかってるけど、検索されたときにクリックされるフックが欲しかった!