黄金のアデーレで笑っていた女性
レイトショーで見ていたんですが、少ないお客さん(この映画に限らずレイトショーとはそういったもんです)の中で登場人物たちのちょっとした冗談や軽いやり取りで笑っている女性客がいました。
確かに登場人物AがBを笑わせようとしたジョークを言いますが、客やBとしては笑えない冗談だったとしてもクスクス笑うんです。最初は邪魔だなと思っていました。
で すが、後半になるにつれて、だんだん彼女が私よりも映画を深く楽しんでいるような気がしてきました。最後のほうは、彼女が笑うシーンで私もにやけていまし た。映画のラストで軽口をたたく登場人物に対して、「計画がうまくいった」とか「もう危機は乗り越えた」とかメッセージを受けることはありますが、一緒ににやけることはほぼありませんでした。「メッセージを受け取る」よりも「一緒ににやける」が私の映画を見る理由に近いかもしれません。この映画でそれができたのは彼女のおかげです。
最後に劇場内から泣く音が聞こえてきました。きっと彼女なんだろうな。
さて、ネタバレ感想です。
黄金のアデーレの感想
絵に個人的な意味があるとなにかで見たと思ったので、最近のアニメ的な何かがあると思ったんだけど何もなかったね。裏の落書きしてたとか、アデーレからマリアに個人的なメッセージがあったとか
取り戻したのはオーストリアの誇りのように思います。マリアはウィーンを受け入れたと思うんですけどね。
最後の役人に対する言葉でスカッとしました。
あれ?もう諦めてるマリア(オーストリアをはじめとしたアメリカ以外の国)と、自分が良いと信じた方向に無理にでも引っ張っていく弁護士(アメリカ)って感じ?アメリカがオーストリアが救ったの?
監督さんはそこまで考えてないかもしれないけど、だからこそ怖いかもしれませんね。アメリカ人の価値感としてデフォルトで備わっているとするともっと怖い。
ナチを今の世情に合わせてたとえることもできるかもですが、まとめきれないと思うよでやめときます。
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アデーレの美しさ
気品のある美しさでしたね。歴史に沿ってるからねつ造できなかったのかもしれなかいけど、マリアが国を出るときか、お姉さんの結婚式に姿を見たかったな。
きれいで優しかったのですが、物語としてはあまり全面に出てない。
字幕に意識を持っていかれて、アデーレを見れないのが勿体無く思いました。
金のネックレスをしたときの、首筋から胸元までの白い肌が色っぽかったですな。
アデーレの生きたころ
20世紀初頭、世界のすべてが混乱に向かっていた象徴であるナチス・ドイツはオーストリアを占領し、我が物顔で闊歩しました。
アデーレは世界が地獄の混乱に入る前のウィーンを生きました。当時、近親者が亡くなった人たちは言ったことでしょう。「あの人が今のオーストリアの状況を見ずに亡くなってよかったのかもしれない」。アデーレも世界の狂乱に故郷がプライドを失うところを見ずに亡くなった人です。
主人公のマリアは20代、ウィーンを捨て両親を置いていくことに後ろめたさを感じながら、オーストリアを出ます。誇りを失い彼女の大事なものを焼き払ったようなオーストリアをマリアは忌み嫌っています。
※ちょっと勘違いしてました。ナチスドイツと手を組んだのはイタリアですね。オーストリアだと勘違いしながら見ていました。
混乱のオーストリア
上にも書きましたが、ナチスの所業は混乱の一番尖った部分の象徴だったと思います。
ラストがナチで終ったし、ナチの傍若無人さが目立ってたけど、肝は時代の流れに翻弄された家族や女性の物語だよね。
その中で庶民の反応が二つ。
逃走中のマリアたちを逃がした洗濯物を干している最中のおばさんと、
マリアたちの事情を一瞬で察して憲兵に告げ口したおばさん。
私としては前者を見れたことがうれしかったですが、後者のおばさんも否定しきれないですよね。
色々。
- 最初は現代日本かと思った。
冒頭の金の貼り方とか丁寧さとかに日本の職人の丁寧さを感じました。どの国でもきめ細かい作業をする芸術家はいるよね。手の器用さが日本人の専売特許じゃないよね
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ギャガのタイトル
映画の最初にギャガのタイトルが出てきたんです。金の文字でGAGAって文字が描かれて、一気に光ります。その光り方をもうちょっと抑えてもらえませんかね?映画本編でもないのに(本編でもダメだけど)目をつぶるほどの光を突然放つのはダメだと思うよ。
- 裁判ってアメリカ裁判って背景で圧力をかけてくるもんなの?
日本ではアメリカの属国と自重するけど、うそでも対等といった感じでちょっとうれしかった - ランドルの奥さんの強さ
旦那が独立して失敗するわ、再就職したのに勝手にやめるわなのに、怒りながらも支えた人。二人目を旦那に負担かけることなく、さっと出産しちゃいましたね。
黄金のアデーレ 名画の帰還のみんなの評価
軒並み高評価。中でもヘレン・ミランの見せた気品のある演技に票がたくさん。
黄金のアデーレ 名画の帰還のDVDが発売されるので思い出してみました。
途中で弁護士の熱さや暴走が怖くなったのを覚えています。
あれ?もう諦めてるマリア(オーストリアをはじめとしたアメリカ以外の国)と、自分が良いと信じた方向に無理にでも引っ張っていく弁護士(アメリカ)って感じ?アメリカがオーストリアが救ったの?
すっかり忘れていたけど、この記事の冒頭に書いたことが映画を見る理由のはずです。私よりも彼女のほうが映画を楽しんでいるよね。