町山さんの説明
去年、職場を休んだ時に聞いていたTBSラジオたまむすびで町山智浩さんが紹介していたのを思い出しました。
たまむすびで映画『ルーム』を紹介 - 映画評論家町山智浩アメリカ日記
映画『ルーム ROOM』のポイント
- おはよう、洗面器
- ジャックの子供っぽさと大人っぽさ
- ママの時間停止
では「ルーム ROOM」のネタバレです。
映画『ルーム ROOM』は?
部屋の一室で生活する母と息子。生活の全ては日曜日にやってくる男から受け取る品だけで生活していた。
息子は知らなかった。部屋の外に世界があることを。
最近日本で似た事件があったので、もろに頭の中で直結しました。見ていた人たち全員思い浮かんだと思います。少し前だと新潟で9年とか。
前半の絶望感、、、、のはずが、、、、
町山智浩さんの映画紹介を覚えていたせいで、絶望感はありませんでした。「前半は衝撃的だけど、脱出できる。問題は脱出した後」ってのを強烈に覚えてました。
なので、ジャックがじゅうたんにくるまれてパトカーに保護されるまでの緊迫感はありませんでした。監禁犯に捕まりなおして連れ戻されたら尺がなくなっちゃうので。
俺が犬の散歩している人だったら、あんなに風に関われたかなぁ。”子供が父親に駄々をこねている”ってことにして生活に戻ろうとしたかなぁ。
ストックホルム症候群にはならなかったのね
ストックホルム症候群とは、精神医学用語の一つで、誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者が、犯人と長時間過ごすことで、犯人に対して過度の同情や好意等を抱くことをいう。 ウィキペディア
ストックホルム症候群ではなかったですが、ジャックは現状維持のためにママを説得しようとしてました。
生まれてからここでしか生きてこなかったジャックに外の世界があることを一生懸命説明するジョイ。4歳のままでいい、6歳になってからじゃダメ?とか子供っぽかったですね。
思えば完璧なペース配分でした。前半はシナリオを知っており、余裕をもって見ていたせいか、特に感じました。
- 仲の良い二人の日常
- ジャックの世界
- 7年閉じ込められていること
- ジョイの説得とジャックの現状維持
- 監禁犯との関係。
- ジョイの理解
- 脱出作戦1、失敗
- 脱出作戦2、成功
ジョイはストックホルム症候群にならなかったのかと感じたのは「監禁犯との関係」ですね。それなりの信頼関係ができていたように見えます。さらにジョイは7年間も男としか会話をしていません。同情にも好意にも似た感情が出てきそうですが、、、、。
私が常々怖いと思っていることがあります。
数年前に見たドキュメント番組の浮浪者の言葉
「頭の中に常に靄がかかって深いことが考えられなくなっている」
考えることの耐久性や体力がなくなって、仮定に仮定を重ねることができなくなっている。次のご飯のことまでしかたどり着かない。
アパートに住みたいと思うけど、そのために、
- 明日ご飯を食べた後
- 公園に行って
- 日雇いバイトの参加して
- 給料をもらい、
- それらを一週間もらい続けてお金をため、
- 不動産屋にいって物件を探し
- お金を払う
の工程が考えきれない。特に「4.給料をもらい」と「7.お金を払う」の間が長すぎてつながらない。というか、考えが「日雇いバイトの参加して」までたどり着かない。
ジョイもこうなっちゃっていると思うんだけどな、、、、。ジャックが生まれてから五年間延々考えていたんだと思うけど、彼女はよく意識と知的レベルを保てたなぁ。
婦人警官がかっこよかった
ま、脅威のジョイの精神力はともかくとして、ジャックが脱出できました。
婦人警官がかっこよすぎるよ!あんなふうにクローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを駆使できる大人になりたい!相手が考えている時間を待っていられる人になりたいよ!
だけどな、納屋に突入するときに婦人警官が出て行っちゃだめだろう!ジャックはまだあんたにしか心開いてないよ!開いたといっても2割ぐらいしか開いてないけど、運転席にいるあんなごっつい男と二人きりにするんじゃないよ!
こうしてみると前半は少し私の考えとは違い部分がいくつかありますね。ジョイが男に暴行されてなかったのも気になったし。*1
善人しか出てこない
転じて後半。
ジョイの両親は離婚していて、ママのほうが新しい男のレオと一緒でした。このレオが後半の悪人だと思ってました。ジョイを性的な意味で狙う嫌な男でジャックの新たな敵。
まさか最初にジョイと打ち解ける存在になるとは思わなかったよ。ジャックにとって大人の男はトラウマの対象になると思うんですけどね。犬連れてきたりとジョイが不安定になる分、ジョイを受け止める役に係になってました。
外に敵がいない分、ジョイとジャックの内面の葛藤が際立ちました。
ジャックの世界。突然の情報量が多すぎだよね。
ジャックにとって、「見るものすべてが美しい!」ではないですね。「見るものすべてで大混乱」。空も木もジィジもバァバも恐怖であり、広い部屋も落ち着かない。
そして言います。「部屋に帰ろう」。生まれてからずっとあの部屋にいました。あそこからでて10日ぐらい。
外に出てからの人生がまだ0.5%*2ですよ。そりゃ戻りたくなるよ。どんな素敵なベットよりも、”いつものベット”に勝る安心感はありませんよ。
「部屋に帰ろう」と言っている理由はもう一つ。ママが壊れていくのが分かるからだよなぁ。いつものママに戻ってほしいんだよね。「子供はレゴで遊ぶもの!!」という説教は理不尽だよ。
ジョイの混乱
中盤はジョイがいつDVをしてしまうかドキドキしながら見てました。ジョイの時間は17歳で止まってました。今は24歳。まだ達観できる年ではないです。「この子さえいなければ私だって」という結論を出しても仕方がないです。
彼女はそっちに行きませんでしたね。取り返せない時間を悔いて混乱し、ジョイだけでも部屋から出して救うことを思いつかなかった*3ことを悩んだりしてました。
救ってくれたのはやはりジャックでした。だからこそ思いました。ジョイのストレスが高くなっちゃっている分、ジャックがアダルトチルドレンになっちゃってると思いました。
アダルトチルドレン?
ジャックはアダルトチルドレンになりかけてない?
ケア・テイカー(世話役):親や周囲の面倒を見てきたタイプ
- 外面 - 優しい子、思いやりのある子、聞き上手
- 内面 - 自信のなさ、責められてると感じやすい 、正当な欲求を押し殺す
- 言動 - 周囲の役に立つように頑張る、困っている人を放っておけない
- 弱点 - 自分がない、一線を引けない、依存されることを追い求める
- 長所 - 努力家、責任感、道徳感に秀でる、世話見がよい
この物語は中心に見るべきはジョイとジャックの二人ではなく、ジョイ一人です。ジャックが輝いているのはジョイの闇を浮き彫りにするためですね。
、、、というかな?ジャックは頭がいいとはいえ、すべてに対して理解して飲み込みの早すぎ。
お母さんに届けるために髪を切ったのはいいシーンだったね。バァバは全く関係なく「男の子の髪は短いもの」ポリシーでうれしそうだったけどね。
突然、隣のうちの子と楽しそうにしてたのはびっくりでした。
部屋に行きたい
ジャックがずっと言ってた「部屋に行きたい」。「安心できる自分の領域から」から「ママの安定のため」になり「決別のため」になりました。
ジャックはクローゼットの中で寝られないほど大きくなり、「こんな狭かったっけ?」とつぶやきます。そして「さようなら」。ジャックもジョイも、ようやく部屋から出れました。
映画『ルーム ROOM』の感想まとめ
- ジョイの心情部分以外の脇の甘さは目をつぶろう
- 婦人警官の頭の良さとやさしさを見習いたい
- さようなら、洗面器。
映画『ルーム ROOM』の評判
大体4タイプ
- 前半がすごい
- 前半が気持ち悪い
- 後半がすごい
- 端折っている部分が多すぎて、後半に感情移入できない。
今日のご飯はマックでした。