夜明け - 作品情報
作品情報
- キャスト:柳楽優弥さん、小林薫さん
- 監督:広瀬奈々子さん
- 脚本:広瀬奈々子さん
- 公開日:2019.01.18
- ジャンル:人生・日常
- 上演時間:110分
- レーティング: G
あらすじ&鑑賞前感想
ある日の明け方、川辺にやってきた哲郎は、水際に倒れていた青年を見つけ、自宅で介抱する。妻と息子を亡くしひとり暮らし哲郎は、「シンイチ」と名乗る青年を、みずからが経営する木工所に連れて行き、働かせることにする。技術を一から教え、従業員たちも彼のことを受け入れていく。 少しずつシンイチの身の上や本音が漏れだしてくるが、本名を明かせないある秘密を抱えていた。そして哲郎にもまた、決して忘れられない過去があった。
wikipediaに書いてある滑り出しを読むと怪しい雰囲気がありますがR指定はないんですね。
監督は広瀬奈々子さん。是枝さんの助監督を務めていた人の初監督作品。
ここから先は 夜明け の感想です。ネタバレしてます!!
夜明け - キャラクターと俳優
柳楽優弥さん
青年「シンイチ」/芦沢光役
一言で言えば、再起をかけた場所が悪すぎでした。現場まで徒歩で行けるところなんだもん。
成り行きとはいえ、早々に逃げるべきでした。放浪に慣れているわけじゃないでしょうから、別の地というわけにもいかないでしょうけど。
wikipediaみてて、やっとはっきりしました。
そうだよね、柳楽優弥さんって、
- 中学生の身でとんでもない賞を受賞(14才でカンヌ国際映画祭コンペティション部門で日本人初の男優賞)
- 豊田エリーさんと結婚した
- デブのヤンキー(演技中の写真でもないのに目つきがすごい悪かった)
だったよね?箇条書きの一個一個が別々の人で、私がなぜだか柳楽優弥さんに紐づけちゃっているのかなぁとか考えてたけど、やっぱり単品で柳楽優弥さんのことだよね。
シュッとしたイケメンさんになったもんだ。
小林薫さん
涌井哲郎役
行き倒れを拾って、”もう一度”愛情を何かに注ぎたかった人。
でも、妻子を失った8年前で時が止まっているのでシンイチは受け入れられても宏美は受け入れられませんでした。
堀内敬子さん
成田宏美役
娘さんが「おじさんはママのこと好きじゃないもん」と言ってました。が、大人の恋愛が単純な好き嫌いじゃないことはおじょーちゃんにはまだわかるまいよ(イケメンが中学生ぐらいを諭す感じで)
夜明け - ネタバレ感想 ( 40 / 100 )
イチロウを軸に見ているとわかりにくかったです。哲郎を深堀する話と考えるとどうにか見えてきました。
哲郎にとっての宏美とイチロウの違い
イチロウに対しては出会いが出会いだったので、明確に”救う”というベクトルができてます。ですが宏美よりもイチロウを優先しちゃうのは、また違う事情なんじゃないかな。
端的に言うと、宏美には色がついていて、イチロウは真っ白だったんでしょう。
本来の芦沢光はどういった性格かは描かれていませんが、その悔恨からイチロウは自己主張をしません。なので、哲郎の息子像を押し付けやすかった。一方でイチロウの方も息子になって全く新しい人生を歩こうとして息子に近づこうとしています(髪を染めた)。
一方で宏美は当たり前に自己主張します。それは奥さんと違うとこを如実にぶつけてきます。息子ではなく娘がいます。
哲郎にとって与しやすいのは、奥さんがいないという現実を見せつけてくる宏美よりも、息子と同視できるイチロウの方だったんでしょう。
バッドエンドにさえなっていない。
ラストをイチロウとして見てみると、何もなってない。「期待されてちゃんと拒否しないから受諾したと思われる」を哲郎に繰り返す。
んで哲郎が寝言でイチロウと言っていて、哲郎が自分を求めているわけじゃないと絶望する。知ってたくせに。
最後は「ここは俺の居場所じゃない」と言って逃げ出しました。
んー、、、、何の解決もしていない、、、、。先にも進んでいない、、、、、。
過去の事故を直視できないのは仕方ないけど、ならば、この町にいちゃダメでしょう。
どこで逃げるべきだったんですかね。遅くとも正社員の話が出る前。みんながこっちを見ながらニヤニヤして何かを作ってた当たりかな。
ラストを哲郎として見てみると、はっきりものを言わない息子に価値観を押し付けた形になって裏切られることになりました。二度も。
んー、、、、何の解決もしていない、、、、。先にも進んでいない、、、、、。
それが人の業とは思えないし、哲郎に何かを刻んだようにも見えなかったなぁ。ただただ傷ついただけ。
これでタイトルに「夜明け」を使われても、、、、
本作は心に傷を持つ男二人の話だと思います。その場合の夜明け、特にラストの夜明けは、解決か進展を示すでしょう。
んー、、、、何の解決もしていない、、、、。先にも進んでいない、、、、、。
逃げた先に明るい夜明けがあったようにも見えないしなぁ。
んでね、本作を「夜明け」と銘打つなら、作成される映画の半分ぐらいのタイトルは「夜明け」になるんじゃないの?
それほどありきたりな「夜明け」しか「夜明け」を使ってないですよ。
こちらの方がよほど「夜明け」を有効に使っている。それでも「夜明け」と銘打つには弱い「夜明け」の使い方だけど。
www.frederica-movie-review.com
同じ技を繰り返す
ちょっと困ったこと。
物語を作成する手法の一つに「先に事象や結果を提示して後から事情説明をする」があります。
本作でわかりやすい部分で言えば
哲郎が拾った財布をイチロウに見せる。イチロウは自分のじゃないという
→ イチロウが家探しして財布を盗む。中には本名が書かれた免許証が入っていた
→ 翌日に別件で暴れたイチロウを哲郎が抑え込む。イチロウ「名前を嘘ついているのを知っているのになんで、、、」と泣き出す。
こんな感じですね。ほかには、パチンコ屋さんの前で肩をたたかれたイチロウがおびえるように逃げて行ったのは、事故現場だったからなど。
5回も見れば十分ですが、10回ぐらい同じ手法を見せられたような気がする。もうおなかいっぱいです。
技術を盗むのは難しいよね。
広瀬奈々子監督のtwitterの自己紹介文に経歴が書いてありました。
是枝裕和監督「海よりもまだ深く」、西川美和監督「永い言い訳」の監督助手
両方とも見ました。「永い言い訳」なんて2記事も書きました。
- 映画『海よりもまだ深く』感想/評価:65点/阿部寛さんの悪あがきと樹木希林さんの喜怒哀楽
- 映画『永い言い訳』感想/評価:70点/幸夫(本木雅弘さん)の鏡:陽一(竹原ピストルさん)と真平(藤田健心さん)
- 映画『永い言い訳』/夏子(深津絵里さん)の「もう愛していない。ひとかけらも。」の意味
どちらもテーマを受け取るのに人生の熟練が必要な映画でした。私はぎりぎり理解したつもりだけど、監督さんたちが言いたかったところまでたどり着けているかどうか。
広瀬奈々子さんは両監督に映画のノウハウを手取り足取り教えてもらったわけではないでしょう。重要なのは気づいて技術に盗める感性だったと思います。両監督さんが気づかずにやっていることが大事な部分は、教える側から「こうすべきだよ」と言い出せないしね。自分の中の無意識は無意識なので自発的に人に教える心理の階層まで持ち上がらない。
どういいまわしても「部外者が上からものを言うな」ということにならないので、まっすぐに言います。
広瀬奈々子監督、頑張っていこう!!「海よりもまだ深く」も「永い言い訳」も、本作よりももう少しわかりやすかったです。
この辺のバランスが、両監督の「気づかずにやっている大事な部分」かもしれないけどね。
日常に潜む人の業
ちょっとそれます。
この人こそまさに”日常に潜む人の業”。本作内での意味合いとしては「イチロウを追い詰める一因」なのでサブストーリーみたいなものですが。
イチロウを行きつけのスナックに呼び出す工場のお兄ちゃん。後輩ができてうれしかったんでしょうね。
素性を言わないイチロウの正体探しに盛り上がってしまい写真を撮ろうとしたらイチロウにスマフォを叩き壊されてしまいました。キレないで自分の非を認めるお兄ちゃんは優しい人だしイチロウを大事に思っていることでしょう。
だからこそ、スナックの姉ちゃんがレストランの事故のことを内緒話したとき、そのゲスい笑い方にお兄ちゃんはキレました。
男前でした。ここまでは。
後日、お兄ちゃんはイチロウを執拗にパチンコに誘います。断り切れずにパチンコ屋に現れたイチロウにお兄ちゃんはしつこく事故のことを聞きます。
無責任に人の傷に触るなとスナックの姉ちゃんにキレときながら、自分は触りに行くお兄ちゃん。
オレは味方だから聞いてもいい、味方だからこそ本人から聞いて事実を確定しなくてはならない。
お兄ちゃんの理屈はマウンティングとも少し違いますが、された側の心をザワつかせて態度を硬化させますね。こっちはまだそこまで心を開いていないのに。親近感の押し付け。
あ、そう考えると哲郎もやっていることは同じ、、、、、いや、根本が違うか。哲郎は息子と関係をやり直したくて焦ってたって方向ですね。
夜明け のベストシーン
映画のキモ
寝言「音楽を辞めて家具を作れ、一郎」を聞いてしまったイチロウ。
わかっちゃいたけど、やはりショック。芦沢光に戻ることにしました。
、、、、、なんですが、それで心が折れるならとっくの昔に折れているような気がするんだよなぁ。少なくとも茶髪にして一郎に近づこうとはしない。
冗談
冗談とは少しずれますが、冒頭で釣りに来た哲郎が何か(倒れたイチロウ)に気づいて、大慌てで川辺に降りるシーンがあります。
その時のカメラに酔った。あれは哲郎の慌てている心情を描写している演出じゃねえ、、、単なる手ブレだ、、、、、。
きれい・かわいい・色っぽい
ない。柳楽優弥さんの半裸シーンもなければ、堀内敬子さんがバスタオル一枚シーンとかもない。
強いて上げるならスナックのお姉ちゃんの肩だしドレス姿かな?
夜明け の評判
3.22/5.0 (yahoo映画 2019/01/24)
最後の朝日や朝日の中にいる柳楽優弥さんに感動している人も少なくない。
私と違う解釈をして絶賛している方々がたくさんいらっしゃいます。
各個撃破したくなっている私は、まだまだ人の意見を受け入れられない未熟者。
その他
私のこと
最近、switch fit boxingを買いました。
毎日パンチをぶん回していたら、肩甲骨がほぐれまくったらしい。背中で合掌ができるようになってました。驚いた。
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