安楽椅子探偵もの。信用できます。
謎解きはディナーのあとで の系統ですね。事件が解決した後の物語はほとんどなし。
目を引くのは、誰の目線かってことです。関係者だけど、犯人だったり、そうじゃなかったり。話の中心にいるし、事件の最重要人物の一人だけど、物語ごとに立ち位置が違います。
語りが探偵でも犯人でもない。その目線が面白かったです。
出題パートと答えパートに分かれているので、物語の途中でいったん止まって真相を考えてました。この遊び方をする時は答えパートが納得できないと、遊びが怒りに変わります。この小説は答えパートを読んで納得できました。答えパートに入ってからの後出しもほぼなかったです。続きが出るなら、私は同じ遊び方をして読むことでしょう。
さいしょの客 友人と、その恋人
2人めの客 はじめての一人旅
二つを見て、この小説のルールが分かりました。
北良さんが、妙なこと言ったら、出題パートが終りね。
さてネタバレです。
罪人よやすらかに眠れの評価
上に書いたように出題パートとそれに対応する答えパートは信用できます。楽しかったです。
けどね、高い。お昼ごはんを食べながら二日で読める(真相考える時間込み)分量に1,650円は高い。ギリギリで700円です。
二日で読んでしまったのは読みやすかったってことなのかなぁ、、、、。
3人めの客 俳諧と彷徨
ルールが飲み込みきれてなかったようで、カスリもしませんでした。息子さんがイギリスに行ったってことは引っかかったんだけどなぁ。
夫婦仲までは考えが及びませんでした。
4人めの客 懐かしい友達
当てました。ぴったりでした。動機から死亡理由までぴったりでした。よし!
人の業を愛した立川談志師匠
5人めの客 待ち人来たらず
シングルマザーさんと連絡がつかなかった理由がどうしても分からず。ち、、、一緒に駅まで来た前提で考えちゃったよ。
さいごの客 今度こそ、さようなら
出題パートで真相までたどり着くのはちょっと無理ですね。この章だけは、物語にちょっと不信感。
私が「人の業」という言葉を知った作品。
北良さんの正体
最後に北良さんの正体について引っ張って終ります。彼と中島家の方々の一番の違いは北良さんは屋敷から出たことがないってことです。つまり彼は彼の業から逃れられていないってことです。
さいごの客の藤森さんが考えた”北良氏は、驚くほどの洞察力を持っている。他人の生死を淡々と語れる、超然とした態度。加えて、人間とは思えないほど澄んだ目。(中略)北良氏は、説明していないわたしたちの居場所を知っていた。それは事件当日にあの場所にいたからではないのか。あの場所で、私たちの動きを見張っていたからではないか”
要するに鋭すぎじゃね?ってことなんですが、中島さんたちとの会話を見ると北良さんの真相にかなり近づいたってことらしい。
彼の能力は「相手の記憶を覗き込み、相手自身の表層に出てきていない記憶の部分も見ることができる」かなと思ったんですが、超能力的な設定はよっぽどうまく描かないと興ざめします。(この小説はそんな世界観じゃないからね)
必ず各章で誰かが寝ていて、北良さんが記憶を覗いている?、、、、は違うか、何人かはミレーの部屋に運ばれて寝てたけど、全章じゃなかったよね。
北良さんが屋敷から出れないのに、中島さん一家が出入りできる理由は何だろう。彼らも単なる住人じゃないよね?何かしらの業を背負っているんだよね?実は旦那さんも屋敷から出れない。その真相が分からないから家族も屋敷に縛られているけど、家族は業をもっていないから出入りが可能とかかな?
北良さんなどの中島家の住人の正体がはっきりと出てきたり、主人公になる事件が描かれるかは分かりませんけどね。
この小説とは違い、信用したら後半に全力で裏切られた作品はこちら